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5. 「食べ物」を選ぶことは、未来の「自分自身」を選ぶこと

味噌を生業として10年、思えばこの間、ものの見方や考え方は、随分変わってきたと実感しています。学生時代やライター時代には、知らなかったことや気づかなかったことを思い知らされてきたからでしょうか。

たとえば、私たちが毎日口にしている「食べ物」。ただ「食べ物」だと思いがちですが、これらはやがて「自分自身」になっていくものです。ですから、「食べ物」を選ぶことは、未来の「自分自身」を選ぶことに等しい行為だと思うのです。そしてそれはあくまで「選ぶ」ものです。

以前、東京で街を歩いていたとき、あるファーストフードの店の前のボードに野菜の生産者が書かれていて「栃木太陽の会」「あゆみの会」など、見慣れた名前が出ているのを見つけ、思わず嬉しくなって店に入ってしまいました。そのとき「嬉しく」なった自分を見て気づいたのは、私たちの関係は「生命を共有する親戚づきあい」のようなものではないか、ということです。

「らでぃっしゅぼーや」というネットワークを通して、食べ物を作る人、運ぶ人、食べる人、それらをまとめる人たちが、それぞれの得意とする分野を精一杯にがんばる、という関係で成り立っているわけです。ただの「モノ」や「お金」のやりとりだけではない、「生命を共有」している仲間として。そのことに、改めて喜びを感じました。そしてそれは、或る意味でネットワークの中での自給自足に近い形態とも言えるのではないかと思えるのです。

私の母は、私が出かけるときに、必ずおにぎりをにぎり、持たせてくれます。私自身は、「飽くなき食の探求者」として外食も楽しみなのですが、この頃、おにぎりを持たせてくれる意味がわかりかけてきました。自分が作ったものを食べさせておく、ということが、一番安心なのだろうと思うのです。それが「母性本能」なのかも知れません。

この国には古くから「身土不二」という考えがあり、四里四方で採れたものを食べていれば、病気にかからない、ともいわれています。自然の恵みというものは実にありがたいもので、初夏にとれる麦は身体を冷やし、秋にとれる米は身体を暖めてくれる働きをしてくれます。自然が、人を守っていてくれるのです。

「食べる」「食べさせる」という言葉の意味を、もう少し深く考えたいと思います。太陽と、土と、水と、そんな大自然の恩恵を受けながら、私たちの「食べ物」は生まれ、育てられています。そんな現場のことを、食べている方々にも、理解していただきたい。そして、私たちも食べる方々のことをよく理解した上でのモノづくりに務めなければならないとも思います。それらは私たちの生命を育んでくれる、大切な糧であるということを、いつも忘れないように。

「あの人が作ったものだから安心できる」そんな関係を、らでぃっしゅぼーやは作り、育ててきました。そしてこれからも、そのつながりは強くなっていくものと信じています。そこからは、母のおにぎりにも似た「あたたかさ」と「安心」が伝わってきます。

「顔の見える関係」を超えた「心の通う関係」へ。ココロもカラダも健やかでいられるために。そこには、土や水を汚さない農業や、化学物質に頼らない食品加工に向かい合っている人たち、そしてそれを応援してくれている人たちが、たくさんいます。それが嬉しい。ヨロコビはココロの栄養です。

そう、つくる人も、はこぶ人も、たべる人も、つたえる人も、みんな「生命の共有」している、大切な仲間なんですから。

五月女清以智
はるこま屋代表取締役

*らでぃっしゅぼーや会員誌「お話サラダ」2001年掲載原稿から

Posted by saotome at 2004年10月05日 09:19 | トラックバック

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