4. 味噌屋は、もっと「味噌」を大切にしなくてはならない
毎年冬に「元気くん」で扱っていただいているアイテムに「手作り味噌キット」という商品があります。おかげさまで毎年好評で、年々手作り味噌に取り組まれる会員さんが増えていることを、とても嬉しく思っています。
よく醸造の世界では、「蔵ぐせ」「桶ぐせ」という言葉が使われますが、その言葉通り、味噌も熟成させる場所(環境)によって仕上がり具合はかなり異なってきます。例えば私どもの蔵でも、桶によって(桶そのもののくせや蔵の中での位置)、或いは仕込み時期や出荷のタイミングによって、仕上がりはそれぞれに異なりますし、同じロットで製造した仕込み味噌(熟成する前の段階の味噌)でも、熟成させるご家庭によって、やはり仕上がりは異なります。これは、空気中にいる微生物(酵母菌や乳酸菌)の働きによるところが多く、人間にはまだ支配できない領域のものなのかも知れません。
手作り味噌の場合、夏場にカビ類が発生したりして不安になることもあるようですが、よほどのことがない限り、秋にはおいしい味噌に育ってくれています。一番やっかいなのはカビですが、味噌はまたカビによって育てられます。自然の怖さと強さを教えられる作業でもあります。手間も時間もかかりますが、「自分で自分の食べ物を作る」ことでが食べ物」に対する知識と愛着を深めるきっかけになっていただければ、と思っています。
今日ほど「食べる」ことにリスクを感じる時代はなかったかも知れません。だからこそ、「食」に対する正しい情報と知識が必要だとも思います。そして、本来在るべき「食」を、より自分の手に取り戻したいものです。
ここ20年ほど、「減塩運動」の定着によって、塩の味が前面に出てしまう味噌や醤油が目のかたきにされてきたような感があります。しかし、みそ汁一杯の塩分は1.5グラムほどで、そう気にするほどの量ではありません。さらに、味噌に含まれる塩分は果して人間にとって有害なのか、と考えると、そうとも言えないように思うのです。大切なのは、摂取することだけでなく、余分なものを「排出」すること。
そこで活躍するのが、微生物(バクテリア)です。 味噌に含まれる微生物には、腸内の腐敗菌や有害物を対外に排出する働きがあり、味噌の効用のひとつとして注目されています。しかし、酵母や乳酸菌が生きていると、袋が膨張したり、表面に産膜酵母という白いカビ状のものが発生することがあるため、味噌にアルコール添加や熱殺菌をして発酵を抑えて(つまり、微生物を死滅させて)出荷するところが、一般的になっています。しかし、それは流通上の都合であって、味噌そのものの品質を維持することとは、少し意味合いが異なります。逆に味噌そのものの力を半減させることになり、「生きている味噌」をお届けしたいと考えている私どもではそれらの作業は行っておりません。
味噌屋は、もっと「味噌」を大切にしなくてはならないと思うのです。 カビも酵母菌も同じ微生物の仲間ですが、ただひとつ、微生物について確信をもっていることがあります。それは、人間をはじめ、すべての生命体は、微生物によって生かされている、ということです。目には見えないのでなかなか気づきにくいことですが、それなくして「いのち」は成り立ちません。ところが、近代化学は、その微生物を死滅させることばかりを追求してきたような気がするのです。はたしてこれで、人間の生命力が育めるのか、疑問に思わざるを得ません。
「天人合作」…私どもの味噌には、そんなコピーをつけさせていただいてます。大地と海の恵み、蔵伝統の技、ゆるやかな時間の積み重ね、自然の力…そんなものたちがひとつになって、味噌は生まれてきます。手作り味噌も、同じです。それは、農業も漁業も、自然を相手にしている仕事には、同じことが言えるのかも知れません。
ところで、手作り味噌に取り組まれた会員さんから「春駒みそよりおいしい!!」という感想をいただくことがあります。嬉しいような、悔しいような…。しかし、そう思える味噌に出会えたことは、何にも代え難い喜びに違いありません。だからほんとうは、そんなとき、やっぱり私も嬉しいのです。
五月女清以智
はるこま屋代表取締役
*らでぃっしゅぼーや会員誌「お話サラダ」2001年掲載原稿から
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by saotome at 2004年10月06日 09:18 | トラックバック