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3. 「あるちざん」 あらまほしき味噌

昨年夏から「元気くん」(らでぃっしゅぼーやのカタログ)で扱っていただいている「春駒みそ・あるちざん」という味噌があります。この味噌が生まれた背景、そしてその後の取り組みには、私の思い描いていたひとつの味噌の「そうあってほしい」姿があるのです。

坂東さんが大豆を作りたいと言っている。その大豆で味噌を作ってみないか・・・。4年ほど前のことでしょうか。そんな話しをらでぃっしゅのスタッフからされたとき、涙が出るほど感激してしまいました。これまで自分がしてきたこと、見てきたもの、感じてきたこと、それらの延長線上に在る今。そのひとつの結晶としてこの味噌が生まれてくるような気がして、嬉しくて、ありがたかったからなのでしょう。

坂東さんに出会った頃の私は、編集者としてらでぃっしゅにかかわっていました。そして、坂東さんは、らでぃっしゅの「顔」でした。覚えている方もいらっしゃるかと思います。なだらかに広がる富良野の丘と、そこに在る、坂東さんの笑顔。それだけで充分でした。誇り、自信、愛情、ポリシー…言葉を超える迫力が、その写真から伝わってきました。その坂東さんが春駒味噌を愛用していると聞いたときには、嬉しかったと同時に、緊張したものです。

坂東さんの作った大豆で味噌を作る。それそのものに、夢を感じました。この味噌には、味噌に対してできることは、何でもしてあげよう。米洗いから、板麹での製麹、大豆の蒸し方、混合、木桶熟成…まだまだ私の力の及ばないところはあるとは思いますが、それでも最大限のことはする、そう心に決めて、仕込みに向かいました。

それから一年半、大豆の作付けからは二年以上の歳月を経てやっとデビューを迎えたその味噌を「あるちざん」と名づけました。命名したのは、私の妻です。「あるちざん」とは、英語の「artizan」からとった名前で、「職人」の意味です。

かつて編集者として仕事をしていた頃、相棒の写真家を一冊の本をつくりたいと考えていました。日本全国に残る、手仕事の技。その美しさと必要性を、写真と文章で表現し、伝えてみたいと思っていました。そのとき、相棒の写真家が提案したタイトルが、偶然にも「artizan」でした。単なるノスタルジアではなく、技術の伝承、地域のポテンシャルを生かした社会、経済、教育など、その世界が内包する世界は、果てしなく広いのではないかと考えています。

手仕事から機械化に移行はできても、機械から手仕事に戻すことはできません。そして、人間の技や力、勘といったものは、まだ機械が及ばない部分も、多分にあるはずです。何が新しく生まれた美しさで、何が失われた大切なものか、それをいつも見つめていなければならないと思うのです。

こうしてみると、「あるちざん」は、私のライフワークともいえる作品(敢えて、そう呼びたい)のようです。単に原材料を買い、味噌をつくり、売るだけでなく、そこにかかわるひとつひとつにこだわりたいし、大切にしたい。そして、そこにかかわるすべての人たちが「プロ」であるべきです。あの表情をもった坂東さんの作った大豆だから、春駒みそを愛してくれていた坂東さんの作った大豆だから、大切に仕込みたいと思いました。そして、大切に育てたいと思いました。1年目よりも2年目、そして3年目と、確実に大豆の出来も、味噌の仕上がりも向上していると自負しています。

4年目の作付けだった今年は、大豆の品種を変えました。私が、味噌に最も適しているのではないかと思っている大豆です。また1年後を楽しみにしていて下さい。

「あるちざん」は、進化していきます。 米をつくる人。大豆をつくる人。塩をつくる人。そして味噌をつくる人。70年前、この木桶をつくったじっち(桶屋のじいさんをそう呼んでいた)。蔵のほとりを流れる武茂川。竹林に遊びにくる小鳥たち。ゆったりと流れる時の流れ。この味噌を見守ってくれている「らでぃっしゅぼーや」のスタッフのみんなや会員さんたち。そんな愛すべき「あるちざん」たちに囲まれて、ひとつの味噌が生まれ、育っている。そのことに、改めて感謝しています。そして、だからこそ、がんばらなくちゃな、と気をひきしめて、今日も味噌にむかうのです。

五月女清以智
はるこま屋代表取締役

*らでぃっしゅぼーや会員誌「お話サラダ」2001年掲載原稿から

Posted by saotome at 2004年10月07日 09:12 | トラックバック

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